グローバル展開する外資アパレルチェーン の中でも人気が高かった「GAP」や「H&M」、そして「ZARA」。
しかし、2019年には「アメリカンイーグル」「フォーエバー21」が次々と撤退して外資アパレルチェーンは総崩れと言われるように。
加えて、2021年には「HACKETT LONDON(ハケット ロンドン)」銀座の閉店、その他にも「ベネトン」「KOOS」など、アパレル業界における事業撤退・縮小は近年多く見られるようになっています。
外資アパレルチェーンはローカルマーケットの将来性を比較して投資判断しており、少子高齢化と経済の停滞で所得と消費が落ち込む日本には将来性が無いとみるブランドが増えているのです。
旗艦店が次々撤退
「高級ブランドが揃う銀座」「トレンドの発信地である原宿」に出店することで、ブランドイメージを高める戦略だった外資アパレルチェーン。
こうした店でブランド力を高め、郊外型のショッピングセンターなどで店舗を拡大していったのです。
中でもかなり定着して売り上げをあげていたのが「GAP」「H&M」「ZARA」の3ブランド。
しかし、2019年5月には原宿にあったギャップの旗艦店も閉店しており、2021年以降だけでも「GAP」の閉店は15店に達します。
「H&M」も国内2号店で最大規模の旗艦店だった原宿店が、今年の8月2日で契約満了に伴い閉店してしまった。
「フォーエバー21」は2017年10月15日で閉店しており、19年10月末には全14店を閉鎖して日本から撤退しています。
インディテックスも今年7月18日に渋谷の旗艦店も閉めて「Bershka(ベルシュカ)」全店を撤退し、「ZARA HOME(ザラ ホーム)」も急速に店舗を絞っています。
この10年、外資系アパレルとして唯一生き残ったブランドが「ZARA」です。
ZARAは商品の多くを本社のあるスペイン付近の工場で生産し、一度スペインに集める。そこから世界中の店舗の需要に合わせたった数日で運んでしまうのが強みと言われる。
振り返ってみれば外資アパレルチェーンが続々と進出したのは13年までで、以降は進出が途絶え、15年以降は撤退ばかりでコロナ禍以降は閉店が急増し、21年の国内合計売上はピークの15年から半減してしまっています。
コロナの影響が大きい
2020年~2021年のブランド終了といえば、誰もが思い浮かべる原因が「コロナ禍」でしょう。
今はファッションに限らず、様々な業態で店に足を運ぶ理由が求められているのです。
コロナで外出できず、モノを買うだけならECで間に合うようになってしまった現在。
一方、ユニクロのようにコロナ禍で過去最高益を記録している企業も中にはあります。
ユニクロは年々商品のラインナップやブランドの立ち位置が変わっており「常に変化する」ことの重要性を体現して赤字を保っているのです。
サステナブルへの意識
2008年9月の「H&M」上陸、2009年4月の「フォーエバー21」上陸で火が付いたファストファッションブームも2013年頃にはすっかり冷め、2014年以降はトレンドファッション自体がサステナブルじゃないと疎まれて、外資チェーンの進出も途絶え、2015年以降は撤退するブランドばかりに。
そう、記憶に新しいと思いますが、2013年4月24日バングラデシュの首都ダッカ近郊で複数の縫製工場が入った複合ビルが崩落した事故。
死者1138人、負傷者2500人以上を出す大惨事が起きました。
この事故により、日本でもサステナブルという言葉が浸透していったのです。
サステナブル(Sustainable)は、sustain(持続する)とable(〜できる)からなる言葉。
「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味があります。
消費者の環境への意識が高まる中、使い捨て感覚で服を購入することに抵抗感が生まれるようになり、この変化が2019年の日本市場の撤退にも繋がった一つの原因とも言えます。
現在、多くの企業がサステナビリティ経営に転換しているため、今後さらに重要視される可能性があります。
他事業への進出が進む
大企業でも中小企業でも、本業が軌道に乗ると他の事業を手がけることが多いもの。
これは必ずしも悪いことではなく、世界のアパレル企業では下記のとおり多数の成功例があります。
大手のアパレル企業による、素材の調達から生産、物流、店頭での販売までのサプライチェーンの構築、ECや海外展開などの事業規模の拡大に向けた販路の強化が行われています。
そのため、アプリ開発等によるWebでの販路拡大や、ICT技術やAI技術の活用による業務のデジタル化、顧客データの管理などを行うために、資金力やノウハウを持つ大手企業や異業種の企業の傘下に入るケースが増えているのです。
■INDITEX(ZARA)
金融・保険・通信・インフラ・不動産・飲食
■Benetton
インフラ事業(高速道路など)
■LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)
5つの事業療育、免税店チェーンDFS
■アルマーニ、ブルガリ
ホテル・レストラン・カフェ事業
今は韓国と中国ブランドが熱い
今SNSなどを中心に話題沸騰中のプチプラ通販ブランド「SHEIN(シーイン)」。
店舗を持たないことによってコストダウンを図り激安価格と、数えきれないほどの商品数が特徴のファッションブランド。
日本では、2020年12月公式HPと公式アプリがリリースされています。
700円のTシャツに、1,500円のパンツ、1,300円のドレスワンピースなど、ZARAと比べても圧倒的な価格競争力を持っていて、米国のZ世代を制することが出来たのは、その低価格にあると分析されています。
最近の傾向では、K-Popや韓流に勢いづく韓国や国潮に勢いづく中国のアパレルブランドのが急伸しています。
・STYLENANDA(スタイルナンダ)
・KIRSH(キルシー)
・chuu(チュー)
・NERDY(ノルディ)
・IMVELY(イムブリー)
・STAFFONLY(スタッフオンリー)
・SHEIN(シーイン)
・C2H4(シーツーエイチフォー)
・ANGEL CHEN(エンジェルチェン)
・UMAWANG(ユマ・ワン)
・Li Ning(リーニング)
あとがき
不況やコロナ禍にも耐えられるブランドを育てるためには、顧客のニーズを正確につかむことが不可欠。
顧客ニーズを正確に掴むためには、販売管理の膨大なデータを効率的に収集し、常に多方面から分析する必要がありそうです。
モノを売るだけでは難しい時代にどう生き残っていくか、今後も注目していきたいです。